ひとり言12 ー 質問の想いよ、届け

先日、高校1年生との授業の中で「自分の好き」を見つけるための質問をしたら「頓智クイズ」になってしまった。生徒たちにした質問はこちら。

「誰かに言われたわけではなく、自分で始めたことはありますか?」

質問に続けて「最近ね、私は近所のカフェに行って本を読んだり書き物をしたりしています。ほにょほにょほにょ〜」と自分のことを伝え、生徒たちのイメージを膨らませようと試みた。生徒たちは3人横一列でおしゃべりを始め、私はその言葉のやり取りを聞いていたのだが、ふと耳に入ってきたのは「呼吸」という単語であった。

え、鬼滅の刃の主人公たちが使う「〇〇の呼吸」のこと?
いや、マインドフルネスやヨガの呼吸のこと?

いやいや、生徒の答えは「酸素を吸って吐く」呼吸のことだ。生徒が話していた答えに私は一瞬耳を疑うと同時に、一本取られた気がした。ただ、質問をした授業の流れからすると、呼吸と答えた生徒は、その質問に答えにくかったために、私の質問の意図と敢えて外したところで呼吸と答えたのだろう。

万人にヒットする(考えを進めたくなる)質問は何だろうか、どんな質問を考えれば良いのだろうかと考えることがあるが、未だその答えは見つかっていない。「問いごよみ」を通して毎日1問、質問を配信しているが、「ハッとした」「何だろう…」「今日の問いおもしろいね」などの受け手の反応は一つの質問に偏らない。質問は、質問を受け取る人の必要や関心、共感などに反応して思考を進めるきっかけとして機能するので、受け取り方は受け手の数だけあるし、質問への関心や必要性がなければ、あるいは質問自体がよくわからなかったりすると考えにくいものである。

頓智クイズになってしまったあの教室で、私は他にどんな問いかけ方ができただろうか。必要性や関心を持ちやすいように質問の意図、例えばそれを考えることが何につながるか、なぜ考えて欲しいかを生徒たちに伝えることをしてみても良いだろう。また、質問を構成する単語や、フレーズを高校1年生に耳馴染みのあるものにしてみるのも良いだろう。自分が普段使っている言葉や物事の捉え方を手放し、相手が使っている言葉や興味関心を取り入れようと工夫することが大切だ。

相手の表現を引き上げるのは質問者の力量が問われる。質問の意図が分かるように話の組立を考えたり、言葉を変えたりするだけでも、受け手が得る印象は異なり思考が広がりやすくなる。そして、質問者のそもそもの想い(意図)も伝わる。

彼ら彼女ら自身の好きを発見していくような質問を私は探している。

 

絵: fukanoart